結論:多くは「任意」。断ってよい場合が大半です
賃貸の契約時に勧められる「防災セット」は、加入を義務づける規定がない任意のオプション商品であることが一般的です。「必須です」「はずせません」と言われても、多くの場合は断れます。ただし、中身によってはすでに法律で備わっている設備と重複していることもあるため、以下で確認点を整理します。
契約時に勧められる防災セットには、懐中電灯、簡易トイレ、非常食、給水袋、モバイルバッテリー、火災警報器などが組み合わせで入っている例が一般的です。中身は業者によって異なるため、内訳を見ずに契約に含めるのではなく、まず何が何個入っているかを確認してください。
すでに法律で付いている防災設備:住宅用火災警報器

防災セットに火災警報器の類が含まれている場合は、特に注意してください。住宅用火災警報器は、消防法および市町村の火災予防条例により、すべての住宅で設置が義務化されています(新築住宅は2006年〈平成18年〉から、既存住宅を含むすべての住宅では2011年〈平成23年〉までに設置義務化)。設置場所は寝室や、寝室がある階の階段など、条例で定められた箇所です。賃貸の場合、この設置義務は基本的に建物所有者(貸主)側にあり、入居時点ですでに設置されているのが原則です(出典は末尾)。
つまり、まずやるべきことは新しく買うことではなく、自室の寝室・階段まわりに警報器が付いているかを自分の目で確認することです。天井や壁に小さな円形の機器が付いていれば、それが住宅用火災警報器です。すでに付いているのに、セットの中の警報器代を別途払うのは無駄になりかねません。電池切れ・故障のサインが出ている場合は、貸主・管理会社に維持管理の連絡先を確認してください(維持管理の費用負担の扱いは物件によって異なります)。
「必須です」と言われたときの確認点
宅地建物取引業法には、防災セットのような付随商品への加入を貸主・仲介業者に義務づける規定はありません。一方で、同法35条1項7号は、家賃(借賃)以外に支払う金銭について、その金額と授受の目的を重要事項説明で説明することを義務づけています(出典は末尾)。契約時に防災セットの費用を支払うのであれば、その費用が重要事項説明書のどこに、何の費用として記載されているかを確認できます。記載が見当たらない場合は、どういう位置づけの費用なのかを尋ねることができます。
「必須です」「はずせません」と説明された場合、まず確認すべきなのは、その費用がいくらで、何のためのものかが、重要事項説明できちんと説明されているかという点です。ここでは「違法だ」と断定するものではありません。「この費用の金額と目的を、重要事項説明のどの部分で説明していますか」と確認するのが現実的な進め方です。
断り方
- 契約前の段階であれば、「オプションは不要です」と申し出れば、多くの場合は初期費用の明細から外れます。見積書の内訳に「防災セット」「安心セット」等の項目があれば、それが対象です
- 「必須です」と説明された場合は、「重要事項説明書のどの項目に該当しますか」「任意加入のオプションではないのですか」と確認を求めてください。その場で明確な回答が得られない場合は、契約を急がず、持ち帰って検討する時間をもらうのも一つの方法です
- 口頭でのやり取りは記録が残りにくいため、可能であればメールや書面でのやり取りを残しておくと、あとで確認しやすくなります
- 一度加入したあとでも、契約内容によっては解約できる場合があります。不明な場合は、契約書に記載された解約条件を確認してください
- 断ることに気が引ける場合は、「必要になったら個別に用意しますので、今回は見積もりから外してください」のように、理由を添えて伝えると角が立ちにくくなります
自分で必要なものだけ揃える

防災セットを断った場合でも、最低限の備えは検討する価値があります。必要なものは一律ではなく、次のような要素で変わります。
- 階数・建物の構造:エレベーターが止まった場合の在宅避難を想定するか、避難のしやすさを優先するかで、備えの優先順位は変わります
- 同居家族の有無:単身か、乳幼児や高齢の家族がいるかで、必要な品目・数量は異なります
- 自治体の備蓄・支援体制:避難所の備蓄状況や在宅避難者への支援の考え方は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の防災情報も確認しておくと安心です
- すでに自分で持っているもの:一人暮らしを始める前から非常食や懐中電灯を持っている場合、セットの中身と重複する可能性があります
これらを踏まえると、たとえば「高層階の単身入居で、モバイルバッテリーと懐中電灯はすでに持っている」という人にとっては、セットの多くが重複になりやすい一方、「初めての一人暮らしで、非常食も簡易トイレもまだ何も持っていない」という人にとっては、内容次第で選択肢になり得ます。セットそのものを一律に否定するのではなく、中身と自分の状況を照らし合わせて判断するのが、緊急時対応の視点からもおすすめできる進め方です。
セットで一括ではなく、中身を一つずつ確認し、足りないものだけを選ぶ進め方が無駄になりません。停電時の電源を検討する場合はポータブル電源おすすめ比較(PW-01)、容量の選び方(PW-L01)、防災グッズ全般の選び方は防災グッズの選び方(PW-02)で整理しています。
よくある質問
「必須です」「はずせません」と言われました。本当に必須なのでしょうか?
宅地建物取引業法に、防災セットへの加入そのものを義務づける規定はありません。一方で、家賃以外に支払う金銭については、その金額と目的を重要事項説明で説明することが同法35条1項7号で定められています。「必須です」と言われたら、その費用が重要事項説明書のどこに、何の費用として記載されているかを確認してください。記載が見当たらない場合は、どういう位置づけの費用なのかを尋ねることができます。
防災セットを断ったら、入居審査に影響しますか?
任意のオプションへの加入・非加入が、入居審査の可否に直接影響する根拠は一般的には見当たりません。不安な場合は契約前に確認してください。
防災セットの相場はどれくらいですか?
インターネット上の相談事例では1万円台前半という例も見られますが、これは個別の事例であり、相場として断定できるものではありません。金額は物件・管理会社によって幅があるため、契約前の見積書・重要事項説明書で確認してください。
セットの中身が気に入った場合、個別に買い足すことはできますか?
セット全体を断っても、必要な品目だけを自分で個別に購入することは可能です。無理に一式でまとめる必要はありません。
火災警報器が自室に見当たらない場合は、どうすればよいですか?
寝室や階段まわりを確認しても見当たらない場合は、自己判断で未設置と決めつけず、まず貸主・管理会社に確認してください。設置義務は原則として貸主側にあるため、未設置であれば設置を依頼できる可能性があります。
まとめ
- 防災セットへの加入そのものを義務づける規定はなく、任意オプションが一般的。断ってよい場合が大半
- 住宅用火災警報器はすでに法律で設置義務があり、入居時点で備わっているのが原則。まず自室で確認する
- 家賃以外の費用は、その金額と目的を重要事項説明で説明することが宅建業法35条1項7号で定められている。「必須」と言われたら、書面での記載の有無を確認する
- 必要なものは住まい方次第。セットで一括ではなく項目ごとに判断する


